やりたいことをやればいい?起業の真実

年明けからデスクワークが続いているので、ちょっとした外出が新鮮に感じます。

まぁ寒いから、あまり出たくないんだけど笑

さて。

ワシがはじめてのご相談者のかたとお話しするときに、お尋ねしていることがあります。

それは、家族構成、世帯の収入源などです。

もちろん、相談者のかたにとって差支えのない範囲でお尋ねしています。

このようなことをお尋ねするのには、理由があります。

この答えによっては「稼がなくてはいけない度」が変わってくるからです。

あなたは、どのていど稼がなくてはいけないのか

たとえば、お勤めのご主人による安定した収入がある上で起業する主婦起業の場合と、ご自身が家族の生活を支えていくシングルマザーの場合とでは、おなじ「起業」に対しても、「稼がなくてはならない度」というものが違いますよね。

「稼がなくてはならない度」が高い人は、ノンキなことを言っていられないのです。

ワシはSNSで「やりたいことでやりたいように起業しよう」という論調を聞くと、モヤモヤしたものを感じることがあります。

もちろん「やりたいこと」で起業することはけっこうです。個人の選択ですしね。

この主張には、裏を返せば「やりたくないことはやらない」というニュアンスを感じます。

生活を支えなくてはいけない「稼がなくてはならない度」が高い人にとって、この「やりたいことを追求する」という方針は、時にとても危うい状態を招くのです。

実際、本来は「稼がなくてはならない度」が高いはずなのに「やりたいことで私らしく起業」というスタンスのグループに入って、取り返しのつかないことになったシングルマザーの人を知っています。

従業員がいる2代目3代目の社長でさえ、危機的状況を「やりたいこと」で乗り越えようとして、けっきょく会社を失ってしまった、という例を3社以上、知っています。

個人事業者こそ持ってほしい「経営的判断」

2012年、とても印象的な記者会見がありました。

自動車メーカのスバル(富士重工)が、トヨタの傘下に入ったのです。

ここで富士重工は、それまで長年にわたって生産をつづけてきた軽自動車から撤退することになりました。

スバルと言えば、古い自動車ファンは知っての通り、軽自動車には長い歴史があります。

スバルの軽自動車には「思い入れ」があるファンが多いのです。

とうぜん、スバルの軽自動車からの撤退を惜しむ声もありました。

それ以上に、スバルの社員にもファン以上に思い入れがあったはずです。

スバル社内の人たちは悔しい思いをしたことでしょう。

当時の社長の吉永氏による会見は、このようなものでした。
(ワシの記憶を記述したもので、正確ではありません)

もちろん、私個人にとっても、たいへん残念だ。
だが私は経営者だ。
ウチの規模で軽に開発リソースを割くよりも、世界で売れる車に特化する。勇気ある決断でも何でも無い。合理的に考えれば軽は撤退しかなかった。

短いコトバの中に、社長の「思い入れ」と「強い意志」が感じられ、いまでも印象に残っています。

会社や、経営者のホンネとしては、軽自動車は「やりたいこと」だったでしょう。

でも会社という家族を支えていくには、「やめる」という合理的な判断をする。

コレが経営者の立場だと思うのです。

スバルの経営者は立派だな、と思いました。

その後スバルは経営を立て直し、日本の自動車業界で利益率ナンバーワンにさえなっています。

決して「私には関係のない、大企業の話だ」と思わないでほしいのです。

個人事業とはいえ、あなたもスバルの社長と同じく経営者なのです。

やりたいことができる時代だからこそ、やるべきことを考える

今の時代、やりたいことで起業できる時代になりました。

やりたいことを続けられる人は、大いに楽しめばいいと思います。

あなたの「やりたいこと」は、人から求められていれば、立派なビジネスとして成り立ちます。

だけど、売れないってことは、求められていないということです。

その前に、誰にも知られていないと言うことです。

その状態を続けるのだとしたら、単にコストの垂れ流しになります。

だからぶっちゃけていってしまえば、お金に余裕があれば、道楽で商売ができるのです。

独身で、経済的に支えるものが無ければ、自分一人がカップ麺だけで生きていくことだってできるのです。

商売をレジャーとして楽しむこともできるのです。

だけど、もっと切羽詰まっている人や、支えなくてはいけないモノがある人は「やりたいこと」に引きずられすぎると、のちのち大変なことになります。

決して「やりたくないことをやれ」だとか「やりたいことをやってはいけない」だとか「いまやってることをやめなさい」ということを言っているのではありません。

「やりたいこと」のために、もっと大切な何かを犠牲にしないよう、合理的な判断を失わないでね。

ってことを言っているのです。

楽しむこと、大いに結構。

でも経営者が楽しむには、責任を伴う、ということを忘れないでね。