「持っているモノを活かす」発想がアブナイ

買ってから2度くらいしか穿いていないのですが、はき心地とシルエットがどうしても気に入らないので、棄てることにしました。

「実際に着てみたらイマイチ」であるにもかかわらず、

「せっかく買ったのに」「まだ何度も着ていないのに」

という理由で、「タンスの肥やし」になってしまうこと、ありますよね。

「なんとか着れないかな」と工夫したりしますが、イマイチなモノはイマイチ。

棄てたほうが、生活がスッキリとシンプルになって、心地よさそうです。

実はこれ、仕事でも言えることなのです。

「せっかくあるものだから活かそう」という発想と「棄てられない服」

地方のコンサルでは、このような相談をいただくことがあります。

「親からもらった土地があるので、何か商売に活かせないか」

そして借金をした上で、実際にその土地にサロンやスタジオを建ててしまった例を、これまでにいくつも見ています。

ワシが知っている例だけでも、ひとつやふたつではないのです。

サロンやスタジオを建てたのは、サロンやスタジオをもともとやりたかったら、その場所でやりたかったから、という理由ではありません。

「せっかく土地があるので、どうせなら」という発想なのです。

残念なことに、ワシが知っているすべての事例で、その商売はかんばしくありませんでした。

その土地の利便性や集客力といった「立地」をほとんど考慮していないことが多いからです。

「たまたまそこにある土地」と「商売上の効果をちゃんと検討して選んだ土地」とでは、勝負にならないわけです。

資格や経歴も「せっかくあるのだから」と発想した時点で同じ

コレクションのようにズラズラと名刺に資格や「できること」が書いてある名刺を見て、同じように感じることがあります。

「せっかく獲った資格なのだから」「せっかく積み上げてきた経歴だから」

と発想した時点で「せっかく買った服だから」と同じなのです。

もちろん、着心地がよくて、気に入った服であれば、問題ないのですよ。

だけど、感覚として「あっちの服のほうがよかったな」と思うくらいであれば、サッサと棄てて、着たい服を買ったほうがよくないですか?

経営判断で重視される「サンクコスト」とは

これは、経営や投資の世界でも重視される考えです。

たとえば、100万円というおカネをつぎ込んだ事業が、うまくいかないとしましょう。

このとき「せっかく100万円もお金をかけたのだから」と無理して続けていると、もっと魅力的な事業に乗り出すチャンスを逃してしまうかもしれません。

もっと良くないのは、こだわって続けた結果、損害が膨らんでしまうことです。

実際によくあるケースです。

そこで、以前に100万円つぎこんだことは、いったん忘れるのです。

そして「いまこの事業をやっていなかったとして、改めてこの事業に乗り出すつもりはあるか」と自問してみるのです。

答えがNoだった場合には、撤退する。つまり棄てるわけです。

いくらで買ったのかだとか、どれだけの時間を費やしたのかという「かかったコスト」のことを、サンクコスト(埋没費用)と言います。

「どれだけの時間とお金をかけたのか」は、「取り返すことができないコスト」として、将来の判断の材料としてはいけないのです。

この判断ができずにズルズルと続けた結果、より経営が悪化してしまう状態を「コンコルドの誤謬(ごびゅう)」といって、大手企業でも陥ってしまう罠です。

ブラウン管テレビから液晶パネルに移行する時代、ブラウン管技術でトップを走っていたソニーは、液晶パネル事業に乗り遅れました。

これは「せっかくブラウン管で培ってきた技術があるから」と、棄てられなかったから招いた事態です。

あなたがいろんな資格やスキルを持っているのだとしたら。

今もしそのスキルを持っていなかった場合、あらためて同じ時間とお金をかけて、再びその資格やスキルを手に入れるつもりはあるか。

これが「手放すかどうか」の基準になります。

 

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この記事を書いた人

高橋 浩士
高橋 浩士
名古屋のスモールビジネスコンサルタント。
個人ビジネス、フリーランス、家族経営の売上アップ、経営安定化の支援。公的機関などからご依頼をいただいて小規模事業者向けのセミナー講師としても活動中。
個人ビジネス起業家向けビジネス入門塾「ワシ塾」を開催。主婦起業家や脱サラ起業の支援しています。

1965年名古屋市生まれ、名古屋育ち。システムエンジニアを9年、デザインスクール講師を4年経験後に、フリーランスや個人起業向けコンサルタントとして独立。
ミラサポ登録専門家、岐阜商工会議所登録エキスパート、(財)岐阜県産業経済振興センター登録アドバイザー、 (財)あいち産業振興機構登録アドバイザー

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