新規事業の立ち上げ方【新規事業開発のポイント3つと注意点4】中小企業や個人事業向け
「新規事業の立ち上げ」を検討する中小企業や個人事業の方に向けた記事です。
でも、やみくもに新規事業を立ち上げて失敗する例も多いです。
この記事では、中小企業や個人事業でも活用しやすい新規事業の立ち上げたかたについてお伝えしていきます。
- 新規事業とは何か?新規事業ではないものとの違いは?
- なぜ新規事業を立ち上げたほうがいいのか?
- どのようにして新規事業を立ち上げればいいのか?
- 新規事業の立ち上げを成功させるためのポイントは?
- 失敗しない新規事業立ち上げの注意点
個人事業から最大スタッフ10人程度までのスモールビジネス専門のコンサルタントです。
自治体(県や市)、商工会議所などの経営相談員やセミナー講師も務めています。
このページの内容
新規事業とは
新規事業とは、企業が新しく展開する事業のことです。
これまでの事業(既存事業)とは異なる事業をはじめることで、新しい事業機会(ビジネスチャンス)を狙うことが主な目的です。
正確な定義はありませんが、一般的には「これまでとは違うビジネスモデルの事業」を指します。
ビジネスモデルとは「収益を生む仕組み」のことで、
- 市場(お客さん)・・・誰に
- 価値(商品やサービス)・・・何を
- 提供方法(販路、販売方法)・・・どのように
の組み合わせでできていますから、このうちのひとつでも「これまでと違う」のであれば、それは新規事業と言えます。
「新商品」と「新規事業」のちがいは?
これも明確な定義はありませんが
商品ジャンルはそのままで、これまでにない商品を販売する場合には「新商品開発」。
あたらしい商品ジャンルに乗り出す場合には「新規事業」と言えそうです。
新規事業に当たらないと思われるケース
- 紳士服量販店が、新素材をつかった「ストレッチスーツ」「冷感スーツ」を売り出す。
- ビールメーカーが「カロリーオフ」のビールを売り出す。
新規事業に当たると思われるケース
- 紳士服量販店が、スポーツウェアを売り出す。
- 紳士服量販店が、オーダーメイドスーツの取り扱いをはじめる。
- ビールメーカーが清涼飲料水を売り出す。
- ビールメーカーがサブスク販売を始める。
企業が新規事業を立ち上げる狙い
企業が新規事業を立ち上げる理由を考えれば「うまくいく新規事業」のヒントが見えてきます。
企業によって新規事業を立ち上げる理由は異なります。
事業規模の拡大、事業機会の発見
事業をより大きく成長しようとした場合、既存事業だけではなく「新しい事業」に乗り出そうとする動機になります。
また、既存事業を続けている中で「よりオイシイ事業」を発見したとき、その事業を手掛けたくなりますよね。
原則として事業はより大きくなろうとする傾向があるため、その手段の一つとして新規事業を立ち上げようとします。
既存事業低迷の打開
いまの時代はコレがいちばん多いです。
- いまの事業を続けていても、大きな発展が見込めない。
- 時代とともに、この業界は小さくなってきている。
そんなとき、経営者は「ほかの事業」に目が向きます。
「今いるところ」が安心できないとわかったとき、「生き延びる手段としての新規事業」が模索されます。
リスク分散
たとえば、既存事業が以下のようなビジネスモデルの時、リスク分散のために新規事業に乗り出す経営者が増えます。
- 流行や天候などに左右されやすい事業のため、売上が安定しない。
- 政治や経済などの環境変化の影響を受けやすい。
たとえば、
- 感染症の拡大によって打撃を受けた飲食店が「弁当」や「通販」に乗り出す。
- 景気によって売上が大きく増減する工務店がリフォーム事業に乗り出す。
といったケースは「リスク分散を狙った新規事業」と言えますね。
複数の収益源を確保することで、ひとつの事業に打撃を受けても致命傷にならないために、新規事業を開拓する経営者は多いです。
「何が起きるかわからない」という状況の中で「もし今の事業に何かあったら」というリスク回避の手段として、新規事業を検討します。
新規事業立ち上げのアイデアを考える3つのアイデア発想法
新規事業の立ち上げを考える際には、3つの「軸」があります。
新規事業といえども、できるだけ失敗はしたくないでしょうから、難易度の低い方向性からお伝えしていきますね。
いまのお客さんにこれまでと異なる商品を売る
新規集客の立ち上げで最初に検討したいことは「既存事業のお客さんに、他の商品やサービスをオススメすること」です。
商売でもっとも大変なのは「新規集客」です。
「今いるお客さん」が、これまでにあなたから買ったことがある商品の「関連する商品」を売れば、買ってもらえる可能性はダントツで高くなります。
紳士服量販店がビジネスバッグやビジネス用のクツを売る。
お客さんは「スーツを着るビジネスマン」なのですから、ついでにカバンや靴を買ってくれる可能性は高いです。
ガソリンスタンドが「車検サービス」「タイヤとタイヤ交換サービス」を売る。
お客さんは「自動車ドライバー」なのですから、車検は必要なサービスのハズです。
レストラン向け食材卸売り業が、店舗備品や消耗品も売る。
すでに食材を販売している「レストラン」というお客さんがいるのだから、「レストランが必要なモノ」を販売すれば買ってもらえる可能性は高い。
だけど新規事業の立ち上げは何も「画期的な事業」である必要はありません。
売上や事業を伸ばすためであることを考えれば、手堅い方法ですね。
まずはこの方法から検討をはじめるのが鉄則です。
これまでと異なるお客さんに今の商品を売る
やや難易度が上がるのがこちらです。
そう考える経営者が多いので、前述の「いまのお客さんにこれまでと異なる商品を売る」に比べると、新規事業の立ち上げの際にこちらを選択する経営者のほうが多いです。
紳士服量販店が「女性用の就活スーツ」を売る。
女性用スーツを作るのはお手の物でしょうが、問題は「これまで来店したことがない女性客に、いかにして来てもらうか」になります。
「焼き鳥居酒屋」が「焼き鳥弁当」のテイクアウト販売を始める。
弁当を作るのはお手の物でしょうが「居酒屋で一杯やりたい人」と「お弁当を買って帰りたい人」のニーズや相手はかなり異なります。
いままでご縁がなかった人たちに売って行こうとする活動なので、「あらたに知らせる」ための手間やコストがかかります。
これまでと異なるお客さんにこれまでと異なる商品を売る
商品もお客さんも異なるため、難易度としては最も上がります。
写真フィルムメーカーが女性用化粧品を売る。
富士フィルムの女性用スキンケア商品「アスタリフト」
農業機械メーカーがインターネットサーバ事業を手掛ける。
農業機械/建設機械メーカー「クボタ」がかつて手掛けたインターネットサーバ事業「ファーストサーバ」
一見すると「なんで?」と思える点もありますが、実は事情があってこのような展開をしているのです。
ただその「事業」とは、事業者側の事情であって、お客さんはまったく知ったことではありません。
そのため、この方法は市場開拓に苦労することが多いです。
新規事業のタイプによる難易度のちがい
ここまでの「既存顧客層と新規顧客層」「既存商品と新規商品」の組み合わせによる難易度を現したのがこの図です。
ここで注意したいのは「手持ちの商品をこれまでとは違うお客さんに売るのは簡単なように思えてしまうこと」です。
商売でもっとも手間と時間がかかるのは「見込み客を見つけること」だと言われています。
「手持ち商品をこれまでとは違うお客さんに売る」タイプの新規事業の場合、この「新たに見込み客をみつけるためのアクション」が必要になることを覚えておきましょう。
新規事業立ち上げのポイントは「既存事業とのシナジー」
新規事業立ち上げが成功するポイントは「既存事業をうまく活用すること」です。
新規事業立ち上げのポイントとなる「シナジー」とは
シナジーとは「相乗効果」のことです。
- 今の事業と組み合わせることで、効率が上がったりコストを下げられる。
- 既存事業のお客さんが困っていることを解決してあげる。
- いまある技術や設備、ノウハウを活かす。
シナジーを意識した新規事業によって「今の事業があるからこその強み」を発揮させることができます。
個人事業や中小企業による新規事業の成功事例
コンサルタントであるこの記事の著者が実際に見聞きした中小企業や個人事業の成功事例をご紹介します。
自動販売機設置業者の「売上金回収代行」事業
たとえば、自動販売機の設置、メンテナンスをしている会社が、「売上金の回収代行」や「商品の補充」も行う新規事業。
依頼者にとっては「1社に頼めばすべてやってくれる」ので助かりますね。
また、定期メンテナンスと同時に売上金回収を行えば、余計な手間も省けます。
ホームページ制作業者による「記事代筆」サービス
ホームページ制作業の課題は「納品するとそのお客さんからの売上がそれ以上なくなる」という点です。
そのため、つねに新規集客や営業活動をしなくてはいけません。
ホームページの定期メンテナンスや、記事の代筆によって、事業のサブスク化が可能になり、売上が安定します。
自動車整備工場によるリース事業、保険代理店事業
自動車の修理は「修理があるときだけ」になりがちです。
車検や定期メンテナンスをサービス化するほかに、クルマを乗る人に必要になる「保険」を販売したり、手持ちの自動車をリースしたりして売上を伸ばすことができそうです。
新規事業を立ち上げる時の注意点
事前調査と計画
「思いつき」で飛びついてしまわないように注意が必要です。
新規事業を立ち上げる前に市場調査や競合調査、財務計画、売上計画、アクションプランなど、新規創業と同じくらいの計画性をもって取り組みたいところです。
既存事業とのリソースの配分
「新規事業に集中するばかり、新規事業がうまくいかないばかりか、既存の事業まで傾く」
というケースは実際によく起きています。
新規事業にリソース(時間やお金)を費やすばかり、既存事業がおろそかになってしまうからです。
新規事業が軌道に乗るまでのあいだ、既存事業にもしっかりと目を配りましょう。
撤退条件
注意したいのは、事前に「やめるポイント」を数値で決めておくことです。
思い入れをもってはじめた新規事業だけに、うまく行かなくてもズルズルと続けてしまい、既存事業にも影響が出ることがあります。
といったような撤退条件を決めておきましょう。
第二の起業(リーンスタートアップ)
とくに個人事業や零細企業の新規事業は「必要最小限の準備でスタートする」ことが大事です。
つまり「新しい事業をはじめるんだから」と、はじめる前にドーンと設備などにお金をかけてしまわないことです。
小さくはじめて、市場(お客さんや売れ行き)の反応を見ながら、徐々にリソースを投入していきます。
まとめ:新規事業の立ち上げで失敗しないために
新規事業の立ち上げで最悪のケースは「新規事業が立ち上がらないだけでなく、既存事業までダメになる」というパターンです。
新規事業なのですから、失敗は大いにあり得ます。
とくに個人事業や零細企業は、新規事業で「イチかバチか」の大勝負をかけてしまうと、取り返しのつかないことになりかねません。
- 新規事業のアイデアは既存事業の周辺から発展させる。
- 既存事業があることのメリットをうまく活用する。
- 新規事業と既存事業とのバランスを取る。
もし新規事業が軌道に乗らなかったとしても、既存事業がしっかりしていれば、また次の新規事業を狙うことも可能です。
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