低予算ではじめる新規事業開発のコツ【小規模企業/中小企業向け】

予算も高度な技術もないけど新規事業を立ち上げたいです。

この記事では、リソースの限られた小規模企業や中小企業がどうすれば新規事業開発を進められるのか、現実的なアプローチについてお伝えしています。

この記事でわかること
  • 新規事業とは何か。
  • 新規事業開発と事業計画の基本とは何か?
  • 小規模企業や中小企業でも活用できる新規事業開発アプローチ
  • 偶発的な要素を生かした新規事業アイデア発想法
この記事の信頼性

スモールビジネスコンサルタント 高橋浩士(ワシ先生)名古屋市
個人事業から最大スタッフ10人程度までのスモールビジネス専門のコンサルタントです。
名古屋市を拠点に全国を対象として活動しています。
自治体(県や市)、商工会議所などの経営相談員やセミナー講師も務めています。
小規模企業や中小企業の新規事業開発の支援実績も多数。

新規事業開発とは

新規事業開発とは、企業が既存の事業とは異なる分野や市場に進出し、新たな商品やサービスを提供するための活動を指します。

新規事業開発は「アイデアの発想」から「市場投入」までを含みますが、市場投入後の「事業として育てる活動」も含めて語られることが多いです。

新規事業開発の要素

新規事業開発の定義にはいくつかの要素が含まれます。

市場進出

自社にとって新たな市場を見つけ、そこに新たな商品やサービスを導入すること。

たとえば男性のウエアだけを販売していた紳士服専門店が「女性用の就活スーツ」を取り扱うことは新規事業としてとらえられます。

商品・サービスの革新

多くの人が「新規事業開発」と聞いてイメージするのはこの「新商品、新サービスの開発」でしょう。

単に既存の商品やサービスのマイナーチェンジではなく、技術的な革新やそれまでなかったビジネスモデルを取り入れることも含みます。

新たな届け方やコミュニケーション

たとえばネットが発達した時代にネット通販に乗り出したり、オンラインでサービスを届けられるようにしたりといった「新たな届け方」の革新も新規事業と位置付けられます。

リソースの新たな利用

企業の持つリソースを新しい形で活用し、それによって新しい市場に参入すること。

「新規事業開発ではないもの」とのちがい

新商品を売り出せばそれは新規事業開発になるのでしょうか?

新規事業開発とは、自社にとってあらたな市場(お客さん)や商品、サービス、提供方法を生み出すことです。

これに該当しない活動は新規事業開発とは言えません。

たとえば「新商品開発」は主に既存の事業において、新たな商品やサービスを導入する活動を指します。

新規事業開発は既存の市場や商品にとどまらず、新たな市場や商品・サービスを生み出すための取り組みです。

新商品開発は主に既存事業の範疇内で新しい商品を導入し、既存の市場での競争強化を図ります。

「新商品」と「新規事業」のちがいは?

明確な境界線はありませんが、新規事業の定義に照らし合わせると、一般的には

  • 誰に(市場、ターゲット)
  • 何を(商品ジャンル)
  • どのように(提供方法)

のいずれかが自社にとって初めての取り組みである場合は新規事業開発に該当すると言えそうです。

新規事業開発に当たらないと思われるケース

  • 紳士服量販店が、新素材をつかった「ストレッチスーツ」「冷感スーツ」を売り出す。
  • ビールメーカーが「カロリーオフ」のビールを売り出す。

新規事業開発に当たると思われるケース

  • 紳士服量販店が、スポーツウェアを売り出す。
  • 紳士服量販店が、オーダーメイドスーツの取り扱いをはじめる。
  • 紳士服量販店が、女性用就活スーツを売り出す。
  • ビールメーカーが清涼飲料水を売り出す。
  • ビールメーカーがサブスク販売を始める。

ただし厳密に新規事業の定義が存在するわけではありません。

経営者としては企業の収益性をアップして成長力をつけることが目的なので、社内での新しい取り組みについて「これは新規事業開発にあたるのかどうか」で悩む必要はありませんね。

中小企業にとって新規事業開発が重要な理由

新規事業開発ってやらなくてはいけないことなんでしょうか?既存事業だけでじゅうぶんなのでは?

成長の機会拡大

新規事業開発は中小企業に成長の新たな機会を提供します。

既存の市場や商品に依存せず、新しい市場や商品を開拓することで、企業は収益の多様化と成長を実現できます。

競争力の向上

新規事業開発は、企業が存続し競争力を高めるための重要な手段です。

企業は新規事業開発によって他社との差別化を図り、新しい価値提供を行うことで、企業は市場でのポジショニングを強化し、競争相手からの差をつけることができます。

リスク分散

一般的に、企業は単一事業に集中すると収益性が向上するかわりに、変化への対応力が低くなる傾向があります。

たとえば自動車部品メーカーは自分がいくらがんばっても「自動車の売れ行き」に業績が左右されます。

新規事業開発によって複数の複数の事業を展開することでリスクを分散させることができます。

特定の市場やトレンドの影響を受けにくくなり、変動する経済状況に対しても柔軟に対応できます。

技術革新と市場ニーズへの対応

従来の事業をそのまま継続しているだけでも、既存事業は徐々に古くなっていきます。

技術や市場が進化しているからです。

新しい事業領域に進出することで、最新の技術や市場の変化に迅速に対応できます。

これにより、企業は先進的なサービスや商品を提供し、市場においてリーダーシップを発揮できます。

組織の活気とモチベーション

新規事業開発は組織に新たな活気をもたらし、従業員のモチベーションを向上させる効果があります。新しい挑戦に取り組むことで従業員は成長し、組織全体のイノベーション力が高まります。

時代変化への対応力の維持

業界の環境や市場の変動の中で、将来の不確実性に対処するために、中小企業は新規事業を通じて柔軟性を確保し、変化に対応できる体制を整える必要があります。

中小企業の現実的な新規事業開発アプローチ手法

大規模な資金も高度なノウハウもない中小企業が新規事業開発するための現実的な手法はありますか?

大規模な市場リサーチや開発チーム、新規事業計画といった「大手企業の新規事業開発」とは異なり、資金も人材もノウハウも限られる実践的な新規事業開発のアプローチ方法についてお伝えします。

中小企業の新規事業開発の課題

中小企業は大企業とは異なり、少ないリソース(予算、設備、人員)でビジネスを回しています。

少ないリソースを「やりくり」しながら新規事業を立ち上げていくプロセスは「新規の起業」「新規創業」に似ています。

そのため中小企業の新規事業開発では「創業理論」が応用できることが多いです。

以下にふたつの「進め方に対する考え方」をお伝えします。

リーンスタートアップ手法

リーンスタートアップは、少ないリソースで迅速に市場に進出し、顧客のフィードバックを得ながらできるだけ早く「儲かるビジネスモデル」を発見するための手法です。

  • 新規事業アイデアを仮説として検証する
  • 最低限の機能をもった製品(MVP)を早期に市場投入して市場の反応や需要を早く確認する
  • 市場の反応によっては柔軟に方向転換する

限られた予算の中で早く「マネタイズのタネ」を発見するためにスピード感が重視されます。

MVP(ミニマムバイアブルプロダクト)の重要性

リーンスタートアップでは、大掛かりな計画や製品の完成のために時間をかけることをせず、最小限の機能を持った商品(MVP)を早期に市場に投入することが特徴です。

これにより、早期に顧客の反応を知り、製品やサービスを改善できるため、効率的な進化が可能です。

エフェクチュエーション理論

エフェクチュエーションは「今のリソースを最大限に生かす」「偶然を活かす」といった、実践的な事業開発理論です。

「必ずしも当初の意図したとおりに進まなくても結果うまく行けばよい」という柔軟な考え方で進めていく点が特徴です。

  • 手持ちのリソースを重視する
  • 許容できるリスクを管理する
  • 目的やゴールを柔軟に変化させる

といった特徴があり、必ずしもゴールや目標が明確でない状態でもものごとを前進させることができるアプローチ方法です。

アジャイル開発手法

アジャイルな開発手法は、ソフトウェア開発などのプロジェクト管理手法として発達した考え方です。

プロジェクトを小さな部分に分け、その都度、成果物を作り上げていくスタイルです。

大きな計画を一度に作成せず、少しずつ進めながら、途中で変更や修正がしやすいのが特徴です。

  • 小さなステップで進める
  • 柔軟に変更に対応する
  • 顧客とのコミュニケーションを重視する

といった特徴があり、リーンスタートアップやエフェクチュエーションと共通点の多い考え方です。


リーンスタートアップ、エフェクチュエーション理論、アジャイル開発は「まったく無関係の概念」ではありません。

どちらも「リソースが限られていること」「将来は必ずしも予測通りにはいかないこと」を踏まえた、現実的な新規事業開発アプローチ方法です。

このブログ記事では、これらのアプローチ方法を応用して新規事業開発の進め方について考えていきます。

新規事業開発を進める上での考え方

綿密な調査と計画に基づいた事業計画ではなく「できることや現実的な対応によって新規事業を作りだしていく考え方」についてお伝えします。

偶発的な要素の活用と新規事業アイデア発想法

新規事業開発を進めていく上で「たまたま起きること」「予想していなかったできごと」はつきものです。

これらの偶発性や不確実性を柔軟に取り込み、新たなアイデアに変えることが新規事業開発を成功させるカギです。

リソースの最大活用

リソースが大きく制限される中小企業の新規事業開発では、手持ちのリソースを最大限に活用できる方法を検討します。

限られた予算や時間、人材(スキル)、人脈やお客さんを考慮して「喜ばれるもの」を生み出します。

たとえば遊休資産(スラック)を活用してマネタイズするなど、地味でも低リスクで確実性の高い新規事業を生み出すことができます。

完璧主義の放棄

中小企業の新規事業開発では、スピード感が重要です。

最初のマネタイズまでに時間がかかればかかるほどコストがかさむからですね。

最短時間で顧客の反応や需要を迅速に検証するためには「製品の完成度を高める」ことに時間をかけないことが大事です。

完成度の高めるために時間を費やして市場投入が遅れるとコストがかかり、リスクが大きくなるからです。

MVPは迅速に市場での受け入れや反応を確認できるため、無駄な開発を避けることができます。

この考え方はおおくの経営者、開発者や技術者にとって大きな抵抗感がありますが、低予算で早く新規事業を立ち上げるために重要な考え方です。

完成度は「これなら売れる」という確認ができてから高めればよく、特にリーンスタートアップ手法では「売れないかもしれない製品の完成度を高める時間はムダ」と考えます。

完成度の低い商品をお客さんに提供すると評判を落としてしまうのではありませんか?

協力的なお客さんに対してモニターをお願いしたり、開発途中であることを明言してお客さんからの協力を仰ぐことで、「お客さんを巻き込んだ新規事業開発」にしていくことが大事です。

学習と改善のサイクル

市場での実際の反応を通じて学び、製品を改善していく試行錯誤のスピードを可能な限り高めます。

未完成であるが故に、顧客フィードバックを受けやすく、それに基づいて素早い改良が可能です。

許容できるリスクの把握

新しい取り組みは「必ずうまく行く」わけではありません。

そのため「失敗しても許される範囲内の損失」であることが大事です。

先の「遊休資産の活用」も「もともと遊んでいた資産だから失敗してもたいしたことがない」という考えで、気軽に始めることができますね。

問題を機会に変換する

世の中の新しい問題や制約がビジネスチャンスになることがよくあります。

たとえば技術者の高齢化によって「技術移転」が問題視されている業界では「技術移転の支援」をすることが事業化できる可能性がありますね。

自分の業界をよく観察し、たんに「グチる」だけではなくそれがビジネスチャンスにならないか?を考えてみます。

共同作業と連携

リソースの制約を乗り越えるためには、外部との連携が重要です。

コラボ(共同作業)やネットワーク、コミュニティを通じて、相互補完的なアイデアを生み出すことができるようになります。

地域の町工場が連携して「共同受注体」を組織する試みは全国で見られます。

商品を共同で購入/販売することでコストを押さえたり、単独では不可能だった商品アイデアが出てきます。

小さな成功からの学習

ベストなアイデアが出てくるまで時間をかけて待たず、今考えられる中でもっともよいアイデアにできるだけ早く取り組みます。

小規模な実験やプロトタイプ(MVP)を通じて、早期に成功と失敗を経験します。

これにより、アイデアやビジネスモデルが磨かれ、実践を通じて事業が改善されていきます。

新しいサービス案をSNSでとりあえず告知し、反応があったら具体化するなど、「先に公開する」ことを意識するとアイデアが発展しやすくなります。

新規事業アイデアの評価と選択

まずは「妄想レベル」から「小遣い稼ぎレベル」のアイデアまで、条件を付けずに思いついたアイデアはすべて書き出してみます。

  • 手持ちのリソースを使った事業
  • 今いるお客さんの問題を解決する事業
  • すぐにでも始められそうな事業
  • 失敗してもたいした損害にならない事業
  • 誰かと協力すればできそうな事業

そのうえで、これらの「やれそうなこと」から手をつけて行きます。

もっと事業性だとか将来性だとかリサーチだとか考えたほうがいいのでは?

いえ、むしろ「先にはじめてしまうこと」によって、事業性だとか市場性は読み取れるはずです。

調査よりも「実際に売ってみること」「現実のお客さんの反応を見ること」の方が大事だからです。

それだと失敗のリスクが高まるのでは?ムダな回り道が増えるのでは?

それらを回避するために「許容できるリスクの範囲内」「すぐできること」を条件にしているのです。

いくら調査をしても将来のことはわからないし、最終的には「やってみないとわからない」のですから

  • リスクを限定した上でサッサとやってみて市場の反応を得る。
  • 見込みがなければ撤退し、見込みがありそうなら高スピードで改善する。
  • 撤退した後でも「現実の市場からのフィードバック」を次の新規事業開発に活かす。

このサイクルを高速で回すことによって「うまく行く事業の発見と開発」を行っていきます。

これまでの新規事業開発とはずいぶん違った「いいかげんで適当な理論」に聞こえるかもしれませんが、この

やってみないとわからないのならリスクを限定して早く試す

という考え方はとても現実的なアプローチなのです。

従来型の新規事業開発アプローチ

ここまでご案内したように、柔軟性や変化への対応力を重視する新規事業開発アプローチは、不確実性の高い状況に適しています。

一方で、従来型の「事業計画」をベースとした計画的実行(コーゼーション)による新規事業開発が有効になるケースも存在します。

  1. 高度な技術や複雑なプロセスが必要な時
  2. 大規模な組織での新規事業開発
  3. 利害関係者(ステークホルダー)の同意や報告が必要な場合

今回は「中小企業での新規事業開発」をテーマとしているので、1や2には該当しないケースが多いと思いますが、注意したいのは3のケースです。

投資家、株主、銀行融資など「利害関係者への報告義務」がある場合には、計画的な新規事業開発が求められることが多いです。

ただいくら銀行への報告が必要だと言っても、将来が見通せるわけではないので、新規事業開発に柔軟性や対応力が必要であることにかわりはありませんね。

失敗の活用

最初に思い付いた新規事業のアイデアがそのままストレートに成功することはほとんどありません。

新規事業開発には失敗がつきものです。

だからこそ新規事業開発にはスピード感やリスク管理が大切になります。
でもやっぱり新規事業開発で失敗すると落ち込みます。

失敗をチャンスに変えるメンタリティは、何かが上手く行かなかったときに、その経験から学びを得て成長し、次に進むためのポジティブな考え方です。

以下に、このメンタリティのポイントを説明します。

学びの機会としての失敗

失敗は必ずしも悪いことではなく、むしろ何か新しいことを学ぶ機会となります。

「失敗したことが結果的に次の新規事業開発につながった」

という事例はたくさんあります。

柔軟性と創造性の向上

失敗した新規事業も、ビジネスモデルのわずかな一部分を修正することで成功する事例が多くあります。

基本的なアイデアがよくなかったのか、部分的な問題だったのか、進め方やアプローチに問題があったのか、といったように「失敗そのものの分析」をすることで「次のアイデア」を作りだすことができます。

まとめ:中小企業の新規事業開発

新規事業の立ち上げに関するさまざまな側面を「予算もノウハウも乏しい」という中小企業の現実に立ったうえで検討してきました。

最後にいくつかのポイントをまとめます。

柔軟性と革新性の大切さ

リソースが制約されているからこそ、柔軟で革新的なアプローチが求められます。固定観念にとらわれず、新しいアイデアにチャレンジすることで、意想外な成果が生まれることでしょう。

「やれること」を重視

「夢はあるけどすぐにはやれないこと」よりも「アイデアとしてはありきたりでも今動き出せること」を重視しましょう。

失敗から学ぶ

失敗は避けられないものですが、それを学びに変えることで、より堅固なビジネスを築くことができます。

失敗から得たフィードバックを事業計画に積極的に組み込むことで、持続的な改善が可能です。

顧客とのつながり

顧客中心のアプローチは、ビジネスの根幹をなすものです。

中小企業の新規事業開発では「お客さんを巻き込むことができるか」がひとつの大きなポイントです。

日ごろからお客さんや協力企業との関係を良好に保ち、イザという時に力を貸してもらえる状態にしておくと、新規事業開発がスムースに進みます。

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