50代起業の注意点とおすすめ起業アイデア
失敗しないためにはどんな点に気をつけたらよいでしょう。
この記事では「50代で起業を検討している人、起業しようとしている人」に向けて失敗しないポイントをお伝えします。
- 日本の50代起業の現状
- 50代で起業するメリットとデメリット
- 50代起業での強みの活かしかた
- 50代起業におすすめの起業アイデアとビジネスモデル
- 50代起業で起業する人への注意点
1965年生まれの50代。個人事業から最大スタッフ50人程度までのスモールビジネス専門のコンサルタントです。
自治体(県や市)、商工会議所などで創業セミナー講師や起業相談、経営相談員も務めています。
50代で起業する人からのご相談者が、半数以上を占めます。
いま、50代で起業する人が増えています。
- 勤めていた会社の経営上の理由や、早期退職などによって会社を辞めた人。
- 健康上の事情や家族の事情などで会社への勤務が難しくなった人。
- 子育てがひと段落した女性。
とくに、50代ではじめて起業する人にとっては、期待と不安が入り混じる、複雑な心境ですね。
このページの内容
50代起業が増えている日本の現状
いまの日本では、「50代の起業」は、決して珍しくありません。
いま全国の商工会議所で開催される「創業セミナー」の参加者のうち、50代の参加者が増えています。
少し古いデータではありますが、2012年の統計では「あらたに創業、起業する人」の平均年齢は
女性で44.7歳
という報告があります(経済産業省「中小企業白書2017」)
起業する人の平均年齢は年々、上昇していますから、おそらく男性の「起業する時の平均年齢」は、2021年現在では50歳を超えていると予想できます。
50代での起業は、もはや「珍しくない」どころではなく、「ふつうのこと」になっているのです。
同じ資料、経済産業省「中小企業白書2017」では、50代起業の特徴として、次のようなまとめがあります。
つまり50代起業家は、手堅い起業を目指している人が多い、ってことです。
セカンドキャリアとしての50代起業
起業家の年齢別構成を男女別に見ると、起業家全体に占める60歳以上の起業家の割合は、増加傾向にあります。
と中小企業白書でも結論づけられています。
これに関連して、いまの時代では早期退職制度の利用や、勤め先企業の再編などによって、定年を迎える前に退職して50代で起業する人も多いと推測できます。
50代起業でとまどっている場合じゃありませんね!
50代起業シニア起業の課題
ただ、喜んでばかりもいられません。
資料からは、50代起業のきびしい現実も見えてきます。
非自発的な起業も多い50代起業
ひとつには「起業したくて起業したわけじゃない」という人の割合です。
起業した人のうち「前職を辞めた理由」は、50代の起業家、60代の起業家と年齢が上がるにつれて「自分から辞めたわけではない」という人が増えてきます。
ここからは、起業への準備不足や、「起業に対する意欲の程度」にも影響を与えていると想像できます。
そのようすは、50代で起業した人の業績にも見られます。
50代起業の黒字化の難しさ
これは、起業1年後に黒字だった割合を年齢別に分類したグラフです。
これは、ただ単に経営者の能力や「ヤル気」といった問題だとは言い切れません。
若い起業家のほうが、50代60代の起業家に比べて「借入(借金)」などを積極的に行い、リスクをとって「攻めの経営」をしているからではないかと、元の資料では分析しています。
50代起業では「守りの姿勢」に入りたくなる気持ちはわかりますが、起業したての人が「守り」の姿勢だとなかなか業績が伸びない可能性が高くなります。
50代起業の課題への対策
経営者が50代で起業したからと言って、お客さんは気の毒に思って買ってくれるわけではありませんし、競合が手加減してくれるわけではありません。
50代起業でも、年齢とはかかわりなく、積極的な「攻めの姿勢」での事業の展開していく必要があります。
若手起業家と戦えるマーケットを狙ったり、ビジネスモデルを構築する必要があります。
50代起業では、「自分でも互角に戦える戦略性」が重要になります。
50代で起業するメリット
50代で起業する場合、以下のようなメリットがあります。
経験と知識が活用できる
50代で起業するばあい、これまでの仕事上の経験や知識を活かした起業が可能になります。
一般的に、50代になるころには、それまでの職業人としての経験や知識が積み上げられていることが多いです。
これらの経験や知識を起業に活かすことで、起業の成功につながる可能性を高めることができます。
人的ネットワークが活用できる
50代になると、それまで経験した仕事の上で人間的なつながりを持っていることが多いです。
これらの人脈を利用して、ビジネスの成功につながるビジネスパートナーや助言者、顧客を見つけることができます。
社会問題への関心の高さ
年齢をかさねると、それまでの職業人生に対する問題意識や、地域社会や社会生活の上での問題点に対する意識が高まります。
これらの問題に対する解決策や、社会的な課題に対する取り組みが「事業アイデア」につながる可能性が高いです。
ビジネスを作り上げるうえで最も大切な「誰のどんな問題を解決するのか」という視点が養われている、ということです。
50代で起業するデメリット
一方で50代で起業することには、以下のようなデメリットが考えられます。
リスク耐性の低さ
多かれ少なかれ、起業にはリスクが伴います。
50代になると「今のままでいい」という安定志向になりがちです。
という気持ちが強くなります。
50代の起業では「経営者のチャレンジする意欲」が低下しやすい点が懸念されます。
時間リソースの少なさ
若い人の起業は
という考え方が通用します。
一方で年齢を重ねてからの50代起業では「残り時間」が気になるようになります
という気持ちが焦りを生み「いちかばちか」の勝負に出てしまうなど、かえって失敗しやすい事態を招きます。
50代の起業では、心理的な切迫感をいかにコントロールするかが大事になります。
体力的な問題
起業には体力的な負担が伴います。
体力的な低下だけではなく、持病のメンテナンスなど「健康面の環境」への配慮が大事になります。
これにより50代起業では選択できるビジネスの範囲が狭くなりがちです。
競争環境への適応
ビジネスの場では経営者の年齢とは関係なく、競合が存在します。
このとき、50代の起業家はテクノロジーやデジタル分野の知識が不足していたり、反応スピードが遅かったりすると、事業の競争力を高めることができません。
思考の柔軟性
社会はどんどん進歩して、経営者は「世の中の変化」に対してすばやく柔軟に対応していく必要があります。
つねに新しい情報を取り入れて学び、スピード感のある判断と行動ができないと、変化の波に飲み込まれてしまいます。
50代起業では、鈍くなりがちな判断と行動のスピードを維持することが大事になります。
50代の起業では「ビジネスモデルの選択」でリスクを回避する
これらのデメリットやリスクは「ビジネスモデルの選択」によって、あるていど回避することができます。
より大きな体力が必要なビジネスや、これまでの経験を活かすチャンスの少ないビジネスを避けることによって、あるていど「50代起業のデメリット」をモロに受けない環境で起業することが大事です。
50代起業シニア起業の計画性と管理
起業にはさまざまなリスクがつきものです。
お金のリスク、社会的な変化のリスク、競合他社との競争などがあります。
これらを分析して、それぞれ対策をすることが大事です。
リスク回避とリスク軽減の対策
リスクが予想される場合、50代シニア起業では「立ち向かう」よりもできるだけ「避ける」方向で考えることをオススメします。
- お金がかかりそうなら「お金をかけなくてもすむ方法」を考える。
- 競合が強そうなら、真っ向勝負せずに「競合とは違うお客さん」を狙う。
- 変化の激しい業界ではなく安定した業界を狙う。
といった選択ですね。
50代起業シニア起業の事業計画と管理
事業計画や創業計画は、起業の成功のカギになります。
起業前に万全の計画を作るというよりも、事前にやるべきことやリスクを把握する上で計画づくりは重要なのです。
「最初からうまく行くことを前提に作り始めてしまうこと」には注意した方がよいです。
先の述べたように、創業計画書の作成作業は「自分の起業アイデアにモレや抜け、重大な欠点がないか」をチェックする役割も果たします。
計画の作成者は、どうしても自分の起業アイデアに惚れ込んでいるので「うまく行くこと」を前提に作成してしまいます。
途中で問題や課題が見つかっても、自分で都合のよいように現実を捻じ曲げて計画を作り替えてしまうのです。
50代起業シニア起業のワークライフバランス
起業家としての仕事も大切ですが、同時にプライベートな時間も欠かせません。
長期的に計画以外にも、日々の時間管理をして、仕事とプライベートを両立させたいですよね。
これが50代起業シニア起業のワークライフバランスの第一歩です。
50代起業の時間管理
とくに起業初期では仕事に没頭することも大切です。
ですが事業があるていど軌道に乗った後は、より長く事業を続けていくためにも無理なく働くために有効な時間管理が必要です。
タスクを細かく分割し、予定通りに進めることで、余裕を持った生活が可能になります。
50代起業だからこそのメリットを活かす
なんといっても、中高年である50代起業のメリットは「豊富な経験を活用できる点」です。
たとえば
といえば、それだけで信頼感が高まりますよね。
逆に、意外と多いのが
といったケースです。
この場合、ゼロからはじめるわけですから、若い起業家と比べたときに、せっかくの50代起業のアドバンテージがありません。
50代起業では「これまで培ってきたこと」を活かせたほうが、うまく行く可能性は高まりますね。
職務や技術、スキルを専門性とした経験知
たとえば「営業ひとすじ30年」「商品開発を続けてきた」という人の場合であれば特定の業務の経験に長けているわけで、このことを活かした起業アイデアを考えることができます。
たとえば
- 産業資材を売る営業マンの育成講座
- 生産効率を上げる部品設計の受託
- プレゼン資料の作り方の講師
特定の業界や市場を切り口とした経験知
ある業界や市場での経験が長い人は、その業界や市場を切り口とした起業アイデアを考えることができます。
たとえば
- レジャー業界のコンサルタント
- 保険業界の紹介営業の広げ方アドバイス
- 工務店の業務改善アドバイス
専門性やノウハウの「切り口」は多様です。
複数の職種を経験した人であっても「切り口」を検討することで「自分の得意」をうまくマネタイズに結び付けることが大事です。
50代の起業アイデアとビジネスモデル
先にお伝えしたように「それまでの経験とまったく関係のない仕事で起業する」のは、せっかくの「50代起業の強み」を活かしくいため、リスクが高まります。
50代起業で、できれば避けたほうがよいビジネスモデルは「労働集約性が高い仕事」です。
50代起業で「体力勝負の仕事」を避けたほうがよい理由
- 体力仕事を伴う仕事は、だんだん無理が効かなくなってくる。
- 体力で勝負の仕事になると、若い人に勝てない。
- 50代起業の強みである「経験や知識」を活かせる要素が少ない。
カラダを酷使する仕事は「お金を2倍稼ごうと思ったら、時間が2倍かかる」という要素が強いため、50代起業には向いていません。
50代起業では「知的ビジネスモデル」を選ぶ
50代起業でますます大切になってくるのは「時間」です。
「どれだけ自分の時間の価値を高められるか」という時間生産性が勝負になってきます。
そのためには、「たくさん稼ぐためにはたくさんの時間働く」といった「時給」の要素がつよい体力勝負の仕事よりも「知的な仕事」のほうが向いています。
ここで活用できるのが、50代起業ならではの「これまでの経験や知識」です。
専門性を活かしたアドバイス業や相談業、執筆や情報発信など「情報そのものが商品になる」というコンテンツビジネスが50代起業に向いていると言えます。
「コンテンツビジネス起業のはじめかた」についてはこちらの記事でご案内しています。
50代起業こそITを駆使する
できるだけ体力を消耗せず、知的な価値を高めていくために欠かせないのが、ITの活用です。
50代起業こそ、ITの恩恵をフルに活用するべきです。
相談やアドバイス、指導なども、必ずしも移動や現場で行う必要があるものばかりではありません。
オンラインを使った相談、アドバイス、指導ができるようになると、移動コストや、移動の時間を大幅に節約することができ、時間当たりの生産性を高めることができます。
50代起業では低リスクな事業アイデアを選ぶ
「退職金をはたいて起業」といったケースでは、事業を失敗したときのダメージが大きいです。
「元手が少なくても始められる起業」では、リスクが少なく、すばやい路線変更が可能です。
少ない元手でも始められる起業アイデアについては、こちらの記事が参考になります。
50代起業で失敗しないための注意点
一方で、50代からの起業での注意点もいくつかお伝えしておきます。
注意点としては「心身」として、健康面と、心理面のふたつを上げておきます。
ビジネスモデルの選択
ここまでで述べたように、50代の起業では「ビジネスモデルの選択」が大きく成否を分けます。
また「飲食店の開業」のように選択したビジネスモデルによっては、後からかんたんには変更することができない場合もあります。
50代の起業でのビジネスモデルの選択について、注意点をまとめておきます。
- それまでの経験や知識を活かせること
- 体力的な負担が少ないこと
- 知的集約性や技術集約性の高く、高い付加価値を提供できること
体力/健康の維持
50代起業シニア起業の場合、より若い人たちの起業と違ってムリが効きません。
そのため「ムリを前提とした事業」は、最終的に「カラダをこわして廃業」という、残念な結果を招きやすくなります。
長年デスクワークをしてきた人が、50代になって野外での立ち仕事や動き回る仕事で起業という場合は、そうとうな覚悟が必要です。
「がんばれば何とかなる」わけではありません。
多少のムリが必要なときはありますが、カラダをこわしてしまっては、意味がありませんね。
時代への柔軟な対応
人は歳を重ねると経験が豊富になるぶん「人の言うことを聞かない傾向」が強くなるように感じます(とくに男性)。
知らず知らずのうちに考えが固定化され、ガンコになるのです。
これは、経験や知識が豊富なことによる、マイナスの効果だと言えます。
「私の経験に照らし合わせれば、それはちがう」という判断をしてしまいがちなのです。
「どちらが正しいか」という問題ではありません。
知識や経験のアップデートができないことが問題なのです。
「そういう側面もあるか」と柔軟に取り入れられないと、時代や常識などの「事業環境」が変化したときに、取り残されてしまう危険があります。
スピード感
50代起業シニア起業の場合、体力的な要因もあって、素早く動くことが難しくなります。
でも「体力的なこと」が遅くなったとしても、思考や判断の俊敏さは、失わないようにしたいものです。
決断や行動を早めるためにだいじなことは「逡巡」(同じことでくりかえし悩むこと)を避けること。
そのためには「決める基準」つまり経営方針を決めておくことが大事です。
さまざまな世代の人との人的ネットワーク
50代で起業する人には、自分とは異なる世代の人たちとの人的ネットワークを作ることをオススメします。
あたらしい時代の考え方や時代の空気に触れ続けるためです。
同世代の人と一緒にいると、話題も通じるし、居心地のよいものです。
でもその「ぬるま湯状態」が、起業する立場の人にとっては危険なのです。
起業する人は「時代の空気」を感じ取らなくてはいけません。
を掴むためにも、50代起業家は自分とは異なる世代、性別の人たちとも積極的に交わっていくことをオススメします。
まとめ:50代からの起業が当たり前の時代の起業
50代起業シニア起業では「やり直せるチャンス」が相対的に少ないため、慎重にならざるを得ません。
これは肯定的にとらえれば「頭を使った手堅い起業」を狙うべし、とも言えます。
- 健康や体力維持のために使える時間が限られるため、より「知的な価値の提供」を追求する。
- 情報をつねにアップデート。
- 計画性と時間管理。
- リスクを避ける戦略性。
自分より若い世代の人たちに混じっても、威張ることなく楽しく過ごせる人は起業に向いています。
50代からの起業は、楽しいですよ。
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