価格競争回避のポイント【脱価格競争7つの対策】

価格競争に巻き込まれないようにするにはどうすればいいでしょうか?

なぜ、だれも望んでいないのに価格競争は起きるのでしょう?

価格競争は、多くの中小企業や個人事業者にとって頭の痛い課題ですね。

経営者なら、おそらくいちどはこの価格競争の問題に直面したことがあるでしょうね。

しかし、なぜ価格競争が起きるのでしょうか?

このブログ記事では価格競争が起きる仕組みを解明し、価格競争を避けるための方法についてお伝えします。

この記事でわかること
  • 価格競争はなぜ起きるのか
  • なぜ望んでもいないのに価格競争に巻き込まれてしまうのか
  • 価格競争に巻き込まれたときのデメリット
  • 価格競争に巻き込まれず「脱価格競争」のためにできること
この記事の信頼性

スモールビジネスコンサルタント 高橋浩士(ワシ先生)
個人事業から最大スタッフ50人程度までのスモールビジネス専門のコンサルタントです。
自治体(県や市)、商工会議所などの経営相談員やセミナー講師も務めています。

価格競争とは

価格競争とは、商品やサービスの価格がおもな競争要因となり、企業が価格を下げることで顧客を引き寄せようとする現象です。

価格競争はどんな業界でも一般的なことで、同業者が多い業界や業種ほど価格競争が激しくなります。
  • 商品の特徴や性能ではなく、おもに「どちらが安いか」という価格で競争している状態。
  • 同じ商品やよく似たサービスを提供している同業者が多いほど価格競争は激しくなる。
  • 独占企業が存在しない限り、ほとんどすべての業界で見られる現象。
  • 同じ業界にあるすべての企業が巻き込まれているわけではなく、価格競争をうまく回避している例もある。

この記事では、価格競争のしくみ、価格競争のメリットやデメリットなどを中小企業経営者向けにやさしく解説しています。

そして、価格競争を回避し、より持続的なビジネスを築くための具体的なステップについてもご紹介します。

中小企業の経営において価格競争からの脱却がいかに重要か、その手助けとなる情報を提供します。

長い記事ですのでブックマークしてお時間のある時にお読みください。

なぜ価格競争が起きるのか

価格競争を回避するためには、まず「なぜ価格競争が起きるのか」を理解することが大事です。

価格競争が起きやすい業界には以下のような特徴があります。

差別化がむずかしい

商品やサービスが他社とあまりにも似通っていて違いがわからないと、お客さんは価格しか「選ぶ手立て」がなくなります。

「専門家から見て同じ商品かどうか」が問題なのではなく、お客さんから見たときに「同じだと見えてしまうこと」が問題なのです。

カンタンに価格を比べられる

以前は何店もお店を回らなければわからなかったような「お店ごとの値段の違い」も、インターネットの普及によってカンタンにわかるようになりました。

お客さんはスマホでカンタンに価格を比較し、最も安いお店や業者を選ぶことができます。

もっとも安いお店にお客さんが集中するため、価格競争が激化します。

消費者の価値観の変化

以前はお客さんが「こだわりをもって選んでいたモノ」も、物価の上昇や技術の進歩によって「安い物でもいいや」と感じる傾向が強くなりました。

たとえば10年前は「テレビは日本製以外に考えられない」と感じていた人たちも、「見た目そんなに違いがないのなら外国産でもいいじゃん」ということで、価格で選ぶようになりました。

「安いほうでいい、安いヤツでじゅうぶん」と考える人が増えると、価格競争が激しくなります。

価格競争が起きる仕組み

価格競争は、いくつかの要因が重なって引き起こされます。

コモディティ化

コモディティとは「価格以外にたいした違いがない状態」のことを指します。

「〇〇業界はコモディティ化しているよね」
という場合
「あの業界は価格(が安いこと)だけが選ばれるポイントになってしまっているよね」
という意味です。

性能やデザイン面などで差別化されていない商品や業界は、コモディティ化しやすくなります。

新規参入と市場競争

業界に新たな競合があらわれると、価格競争が激しくなります。

携帯電話業界にソフトバンクが参入したことをきっかけに、携帯電話料金が一気に安くなりましたね。

業界の新規参入者は「新参者の不利な状態」を挽回するために、価格で勝負をかけることが多いからです。

これが価格競争を引き起こす要因の一つです。

供給過剰

同じような商品やサービスがあふれると、企業は価格を下げて何とか売ろうとします。

時代の変化によって需要が減少した場合や、古い設備しかないサービス業などでも、実質的に供給過剰になるので、価格が下落します。

  • 電化製品の旧型は「旧型でもいいから欲しいという人」が少なくなるので、安くしないと売れない。
  • 築年数が古いホテルは設備が老朽化しているので価格を安くして集客しようとする。
  • 野菜が採れ過ぎると、悪くなる前に売り切りたいので安くして売り切ろうとする。

価格交渉力の低下

たとえば製造業での下請け加工業者の場合、発注元は加工コストを下げて利益を確保したいため「できるだけ安い加工業者に依頼しよう」と考えます。

もし他社より高い見積もりを提示しようとすると他社に仕事を奪われてしまうため、発注元から仕事を得ようと同業者同士で価格競争が起きます。

情報の非対称性

たとえば「誰でもカンタンに作れそうに見える商品」でも、その裏では高度な技術や高価な設備が使われていることがあります。

実際には多額なコストがかかっている商品やサービスであるにもかかわらず、お客さんがそのことを理解していないと

「この商品がこの価格なのは高すぎる」

と感じて購入しません。

生産者や販売者はそれでもなんとか買ってもらおうと価格を下げようするので、価格競争になります。

これらの要因が重なると、企業は価格を引き下げざるを得なくなり、価格競争の渦に巻き込まれていきます。

こうした状況に立ち向かうためには、差別化や戦略的なアプローチが必要です。

なぜ中小企業は価格競争をしてはいけないのか

「価格の安さで勝負する」というのも戦略としてアリなのではないでしょうか?

価格競争に参入することは、一見して新規顧客の獲得や市場シェアの拡大の手段と思えるかもしれません。

その一方で価格競争には多くのデメリットが存在します。

価格競争は大手になるほど有利

大手企業は大量生産や大量仕入れなどのスケールメリット、大規模なシステム化などによって「ひとつの商品やサービスを提供するコスト」を大幅に下げることできるため、低価格で提供することが可能なのです。

同じことを中小企業がやろうとすると「利益を削る」しか方法がありません。

利益の低下

中小企業は大手企業のような大量生産や大量仕入れ/大量販売による利益の確保が難しいため、価格競争に巻き込まれると収益率を低下させるしかありません。

サービスや品質の低下

価格競争の中にいながらも何とかして利益を確保しようとすると、材料の質を落としたり、技術力の低い外注先に切り替えたり、サービス品質を犠牲にすることが起きます。

これらが重なると、結果として顧客の満足度が下がり「客離れ」を起こす原因になります。

お客さんの質の低下

価格競争によって低価格を強調していると「安いから買う」というお客さんばかりになります。

「安いから」という理由だけで買うお客さんは、他に安く提供しているお店や会社があらわれればカンタンにスイッチ(切り替え)を起こします。

安くしたからと言って、「望ましいお客さん」を維持できるとは限らないのです。

高いお店よりも安いお店のほうがクレームが起きやすい現状を考えてみましょう。

従業員のモチベーションの低下

価格競争状態にある業界の中小企業の多くは、人件費を上げることができません。

従業員は安い給料の元で「質の良くないお客さん」への対応を求められるため、モチベーションが上がりません。

結果として従業員の定着率が低下しやすくなります。

資金不足と経営の不安定化

価格競争によって利益が減るということは企業の収益が減少し、資金が減少するということです。

この状態が続くと資金繰りが苦しくなり、経営が不安定化します。

ブランド力の低下

創業直後のユニクロのように「安さ」を強調するブランドもありますが、価格競争にある企業は「ブランドイメージ」の維持が難しくなります。

「けっきょく〇〇は安物しか作っていない、売っていないよね」

というイメージが定着してしまうと長期的なお客さんの信頼が損なわれてしまいます。

さらなる価格競争の激化

もしあなたの会社が他社よりも安く価格設定したらどうなるでしょう?

コモディティ化した業界では「安さで勝負するしかない状態」になってしまっているため、他の会社はあなたの価格よりもさらに安い価格設定で対抗するしかありません。

価格競争は際限なく泥沼化していきます。

価格競争を回避するメリット

価格競争を回避するメリットは原則として「価格競争に参加するデメリット」の裏がえしです。

追加として「次につなげる可能性が生まれる」という事業を継続していく上でたいへん大きなメリットがあります。

利益の維持と事業の持続性

価格競争を回避するということは利益を確保できるようになると言うことです。

これは単に「儲かるようになる」という意味だけではなく、あなたのサービスの価値をより高めるための投資や費用にお金を回せるようになる、という意味です。

これによって価格競争に巻き込まれていたときの「ジリ貧」の状態から先の見通しが立てられる状態になります。

価格に左右されないブランド価値

価格競争を回避するということは「価格が少しくらい高くても買ってもらえる状態を作る」ということです。

この状態が実現できているのだとしたら、それは「お客さんからの信頼や関係性」だとか品質への評価、商品イメージといったブランド価値ができているという意味でもあります。

新規需要や新規事業のチャンスの創出

価格競争を回避することで資金の確保ができれば「新たなこと」に挑戦できるチャンスも広がります。

新サービス開発や新規顧客開拓によって新規事業を立ち上げたり、マーケティング活動を行うことによって「さらに広げる機会」をつくることができるようになります。


これらのメリットを最大限に活かすためには、企業は価格だけでなく、商品やサービスの品質向上や独自性の追求に注力する必要があります。

次に、中小企業が価格競争を回避するために具体的に何をすべきかについて深掘りしていきましょう。

価格競争を避ける7つの対策

価格競争を回避し、より持続可能なビジネスモデルを構築するためには、差別化と戦略的なアプローチが必要です。

中小企業が価格競争から脱却し、独自の価値を提供するための対策について考えてみましょう。

ポイントはふたつ。

  • コモディティを全力で回避する。
  • お客さんにとっての「感じる価値」を高める。

この二点について考えていきます。

なぜ価格競争から離脱するためにコモディティを回避するのか

価格競争のおもな原因であるコモディティは、利用者から見たときに「他社と同じに見える」ことによって起きます。

コモディティを回避するためには「同じように見えない工夫」と「価値ある違いをつくる工夫」が必要です。

商品やサービスを差別化する

コモディティを回避するためには、お客さんにとって意味のある「ほかと違う点」を作りだすことです。

製品やサービスに特有の特長や付加価値を打ち出すことで、価格以外の要因にも顧客が注目するようになります。

技術的なスペックを追い求めるだけではなく、商品デザインやカラーリングなど「商品としての差別化」をトータルで考えるようにします。

サービス的な価値を追加する

たとえば物品の場合は「注文受付」や「お届け」といった「サービス部分」での価値を高められないかを考える。

たとえば「商品の梱包や配送」や「設置」でお客さんの要望を取り入れたりカスタマイズを可能にすることで「お客さんにとってうれしいサービス」を追加することができますね。

サービス業の場合にも「本業としてのサービス」だけではなく「付随サービス」で価値を高められないか考える。

たとえば水泳教室の場合「水泳教室」という本業のサービス以外に「送迎バス」といった「追加のサービス」を考えることで「お客さんにとっての価値」を高めることができそうです。

特定の市場や顧客層に特化する

特定のお客さんに絞り込んだ商品やサービスによって商品を差別化すると、「そのお客さんだけが欲しい機能やサービス」を追加することができるため、価値を高めることができます。

地域密着型をアピールする

地域社会に密着し、その地域の特有のニーズに応えるサービスを提供することで、競合他社との違いを際立たせることができます。

マーケティング対策を強化する

価格競争を回避するために「商品」と並んで強化したいのが「売るための活動」です。

これは「一所懸命売りましょう」という意味だけではなく「売り方を工夫する」という意味です。

顧客関係性を構築する

お客さんとのコミュニケーション量を積極的に増やしましょう。

お客さんの声から商品開発やサービスのヒントにつながることはよくあります。

お客さんにとっては「声を聞いてくれる相手」として映るため、信頼関係も深まります。

このとき注意したいのが「望ましいお客さんの声」に耳を傾ける、ということです。

価格競争をしていた時の「安物買い」のお客さんに耳を傾けてしまうと「もっと安く」という声しか聞こえてきません。

顧客体験価値(ユーザーエクスペリエンス)を向上させる

求められた商品を渡すだけ、サービスを提供するだけではなく「お客さんの体験」を通して自社の商品やサービスを見直してみましょう。

お客さんが「よい買い物をした」「よいお店を見つけた」と感じられるような体験を得ることができれば、価格だけではなく、その体験も「あなたのサービスを買う理由」になります。

商品の改良だけではなく、受付窓口や営業の印象アップ、ウェブサイトやサービスの使いやすさに注力しましょう。

価格競争を回避するために差別化要因を維持する

せっかく苦労してコモディティを回避し、売り方を工夫しても、あなたの工夫をすぐにマネする競合が現れます。

できるだけマネされないようにするには模倣困難性を高める必要があります。

競合他社がかんたんにマネできない独自性を持つことを意味します。

以下は、継続的に価格競争を回避するために、中小企業が差別化を維持するための具体的な取組みです。

知識やスキルの特化

たとえば「宿泊業に特化したデザイン事務所」を目指す場合を考えてみます。

一般的なデザインだけではなく、宿泊業の業務や業界についても詳しくなることで、「お客さんにとっての価値」を高めると同時に、マネされにくい状態をつくることができます。

お客さんを絞り込むと同時に、知識の専門性を高めることで模倣困難性を高め、価格競争に陥りにくい状態を作ることができます。

独自のブランドの確立

いちど「宿泊業のデザイン事務所は〇〇」というイメージをお客さんの業界に植え付けることができれば、そのイメージを覆すことは難しくなります。

キャッチコピーやサービス名称もお客さんの業界にちなんだものにして、独自のポジションを築くことで価格競争に巻き込まれにくくなります。

独自の連携や組み合わせ

  • 「宿泊業のホームページやパンフレット制作だけではなくユニフォームのデザインもできる」
  • 「宿泊業の予約システムも詳しい」

といったような「ほかの同業他社が持っていない独自の組み合わせ」を工夫することで差別化をすることができます。

自社で提供できない場合にも、他業者と連携したり他社サービスを組み合わせることによって独自のラインアップを揃えることができます。

「あの会社に頼めば何とかしてくれる」と感じてもらうことができれば、もう価格で比較されることは少なくなります。

まとめ:価格競争に陥らないために

「値段を安くする」という対策は、工夫も説明もいらない、もっとも簡単な販売対策です。

利益を無視すれば誰でもできます。

そのため「安易に低価格に設定してしまうこと」が価格競争の入口になります。

中小企業経営者が考えるべき重要なポイントは、ただ価格を下げることではなく、独自性を見出し、差別化を図ることです。

知識やスキル、顧客体験、ブランドアイデンティティの構築、継続的なイノベーション、特異なパートナーシップの構築、透明性と誠実なコミュニケーションなど「できること」を総動員してはじめて、中小企業は価格競争に頼らない競争力を持つことができます。

価格競争から脱却できれば、利益が増えるだけではなく、お客さんとの強い関係や独自の価値提供に取り組むことができます。

価格競争を回避するためには地道な努力を積み重ねることが欠かせません。

カンタンに言えばそういった「地道な努力を避けようとする姿勢」が安易な価格競争に陥ってしまう原因になります。

価格競争を回避し、事業を次のステージに進化させるために、柔軟に創造的に、工夫を取り組みをくりかえしていきましょう。

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