価格設定の考え方と方法【利益を増やす価格戦略】
価格設定の方法をおしえてください。
高くすると売れなくなるのが怖いし、安くすると利益が出せない。
このブログ記事では中小企業や小規模事業者を想定した「価格設定の方法と値決めの考え方」についてお伝えします。
個人事業から最大スタッフ50人程度までのスモールビジネス専門のコンサルタントです。
自治体(県や市)、商工会議所などの経営相談員やセミナー講師も務めています。
このページの内容
なぜ価格設定が重要なのか
京セラ創業者、稲盛和夫氏の有名なコトバです。
経営者は、自分が提供するものを「いくらで売るのか」を決めることができます。
いくらで売っても経営者の自由ですが、その結果として経営がどうなるかは経営者が責任を持ちます。
価格設定はあなたの事業の将来を決める大事な決断です。
中小企業の場合、会社の存続にかかわる課題になります。
価格設定がビジネスに与える影響
適切な価格設定を行うことによって、以下のようなポジティブな影響が期待できます。
収益の最大化
価格設定がうまくいくと、利益を大きくすることができます。
価格の調整によって「売れる量」と「利益の率」を調整することで売上だけでなく利益の最大化を狙うことができます。
ブランド価値の向上
適正価格帯で商品やサービスを提供することは、ブランドの価値を高めます。
「安かろう悪かろう」ではなく「価値に見合ったグッドプライス」によって、お客さんはあなたのサービスに信頼感を持ってくれます。
競争力の維持
適切な価格設定により、競合他社に対して競争力を維持できます。
「安いから差別化できる」のではなく「高くても提供している価値とのバランスが取れている」状態を作ることができれば、価格競争に巻き込まれずに差別化を図ることが可能です。
キャッシュフローの改善
適切な価格設定によって、キャッシュフロー(手元にある現金)が改善し、資金繰りが楽になります。
高価格設定と低価格設定のメリットとデメリット
価格設定は「高くすればいい」「安くすればいい」というものではありません。
高価格設定のメリット
高い利益率
一般的に高価格設定は、高い収益をもたらします。
価格を上げることで、売上は減少しても利益が増大するケースもあります。
これにより、ビジネスの成長と利益の増加が期待できます。
プレミアムブランドの構築
高価格はプレミアムなブランドイメージを築くのに役立ちます。
人は「価格によってそのサービスの価値を測る」という傾向を持っているため、お客さんは高価格なサービスに対して高品質や独自性を期待して、それに見合った価格を支払う用意があります。
ターゲットの絞り込み
高価格に設定することで、その価格でも反応する人だけにお客さんを絞り込むことができます。
広くたくさんの人に知らせる必要がなくなるため、広告宣伝活動を集中させることによって結果的に広告宣伝費の削減ができることもあります。
高価格設定のデメリット
顧客層の狭さ
高価格設定によって、低価格を期待しているお客さんは対象から外れるため、見込み客の数そのものは小さくなります。
高くても買ってくれるお客さんを見つけ出すこと、お客さんに見つけてもらうことが難しくなります。
コミュニケーションコストの増大
「なぜ高くても買う価値があるのか」をお客さんにわかっていただくためには、多くの説明が必要になることがあるため、広告費や宣伝費が増えることがあります。
低価格設定のメリット
売上の拡大
一般的に低価格戦略は「たくさん売れる」ことを目指しています。
販売量が拡大することで「売上高」は伸ばせる可能性が高まります。
ウラを返せば、「低価格にしても売れない状態」はジリ貧で、何のメリットもないことになります。
低価格設定のデメリット
利益の制限
低価格で提供する場合、売上高が増えても「利幅」が小さいために、利益そのものは少なくなりがちです。
粗利でコストをカバーできない場合、ビジネスが持続不可能になることがあります。
ブランド価値の低下
過度に低価格で提供すると、商品やサービスのブランド価値が低下する可能性があります。
「安く売っている人」というイメージが定着すると、値上げが難しくなり、過去の自分の価格設定によって未来の自分が苦しむこともあり得ます。
メリットとデメリットは表裏一体
ここまででお気づきかと思いますが、「お客さんを絞り込める」というメリットは「お客さんの数(市場)は小さくなる」というデメリットと同じことです。
「メリットのみ」を求めるのではなく「自分の事業方針にとって最適なメリットを選ぶ」という発想を持たないと、迷うばかりで決めることができなくなります。
「値上げの方法」については、こちらのブログ記事で解説しています。
小さなビジネスは価格競争を避けたほうがいい理由
一般的に、経営体力のない中小企業や小規模事業者は「安さで勝負」をしない方が得策です。
リソースが限られているから
小さなビジネスは大手企業ほどのリソースを持っていないことが一般的です。
人も、お金も、設備も、大手にはかないません。
安くすると多く売らなくてはいけません。
たくさん売ろうと思うと「大量販売の仕組み」がない小さなビジネスの場合には、「売る人」に多くの負担がかかります。
小さな会社が価格競争をすると、社員さんに安い給料でたくさん働いてもらわないといけなくなる、ということです。
「安売りの小さな会社」がブラックな職場環境になりやすいのは、こういった理由があります。
ブランド価値が低下するから
安く提供するには、原材料を安いものにしたり、サービスを簡略化するなどしてコストを削減する必要があります。
安いものを買ったお客さんは、自分は安いモノを買ったことをわかっているにもかかわらず、ガッカリするすることが多くなります。
というイメージになるわけです。
過度な価格競争はブランド価値を低下させる可能性が大きくなります。
差別化が難しくなるから
価格競争は文字通り「価格の安さ」で勝負しているわけですから、裏返せば「他には勝負のポイントがない」つまり「価格以外に差別化されていない」ということになります。
一般的に何らかの「差別化」(他とは違う点)を作ろうと思うと、コストが上昇します。
差別化しようとすると安さで勝負することは難しいのです。
利益が制限されるから
よくテレビで激安の個人商店や飲食店を紹介している番組がありますね。
たいていの場合は店舗のメンテナンスが行き届いていません。
つまり小さなお店や会社が安く売っているケースの多くは、単純に利益を削って安く売っているにすぎないのです。
いくらお客さんに喜んでもらっても、儲かっていないことが多いのです。
価格設定はビジネスの基本です。
一般的な価格設定方法
価格設定にはいくつかの一般的な方法があります。
小さなビジネスは、自身の状況と市場に合わせて適切な価格戦略を選択することが重要です。
コストプラス価格設定
コストプラス価格設定は、商品やサービスの生産・提供にかかるコストに利益を追加して価格を設定する方法です。
また「いくらで売ればいいのかさっぱりわからない」という場合にも、目安となる価格を設定する際に使用できます。
競争価格設定
競争価格設定は、競合他社の価格に合わせて価格を設定する方法です。
プレミアム価格設定
プレミアム価格設定は、高品質やブランド価値に基づいて高い価格を設定する方法です。
バンドル価格設定
バンドル価格設定は、複数の商品やサービスをパッケージ化して一括価格を設定する方法です。
応用範囲が広く、商品やサービス、飲食などほとんどの事業で採用できます。
ダイナミックプライス
お客さんが利用するタイミングによって価格が変動する価格設定方式です。
ホテル、飛行機のチケットなど「タイミングによって提供量に限りがある商品やサービス」に取り入れることができます。
小さな事業者の価格設定戦略
価格設定は「どんな会社、どんな商品の場合でもこのようにすればOK」という法則があるわけではありません。
自社の業界、方向性、特性などの事業環境に合わせた独自の価格戦略が必要です。
以下は、各価格設定戦略の注意点やポイントです。
コストプラス価格設定の注意点
コストプラス価格設定は、「コストをプラスして価格を決める」という手法が単純であるため、小さな事業者にとって実用的な方法ですが、注意が必要です。
- コストを正確に計算する必要がありますが、ここを「ザックリ」で考えてしまう経営者が多いです。
- コストだけではなく、利益を上乗せした価格でなくてはいけません。利益をどれだけ乗せるのかは悩ましい課題になります。
プレミアム価格設定の魅力
プレミアム価格設定は、品質やブランド価値を強調する方法です。小さな事業者にとっても魅力的な選択肢です。
「ただ高くすればいい」というわけではなく「高い理由」をキチンとお客さんにプレゼンテーションすることが大事です。
- 独自性やユニークな特徴を提供することで、プレミアム価格を設定できます。
- お客さんにより丁寧でゆきとどいたサービスを提供することができるようになるため、固定ファンの維持につながります。
バンドル価格設定のメリット
バンドル価格設定は、複数の商品やサービスを組み合わせて提供する方法です。小さな事業者にも利点があります。
- 複雑なオプションが存在するサービスの場合は「おまかせパック」などの設定によって、複数の商品やサービスを組み合わせて付加価値を提供できる上にお客さんの利便性が高められます。
- 複数の商品やサービスを組み合わせることで、売上を増やすことができます。
価格競争を回避するには
価格競争に参加すると利益を削り、徐々に経営は弱っていきます。
価格競争を回避するには、基本的なことを地道に粘り強く進めていくしかありません。
顧客ニーズの探求
お客さんが本当に望んでいることは何か、不満に思っていることは何かを改めてさぐりましょう。
「付加価値を提供する」といっても、「これなら満足でしょ?」と事業者側の自己満足になってしまっているケースが多いです。
まずはアンケートやお客さんとの普段の会話の中から「この部分を改善すればお客さんはもっと満足してくれるはずだ」というポイントを探すことです。
付加価値提供
あなたが独自に掴んだ「お客さんのニーズやインサイト」を、あなたの商品に反映させましょう。
それが「あなた独自の付加価値」になり、差別化できる要因になります。
- 差別化と独自性のアピールをする。商品やサービスの特長を強調し、競合との差別化を図ります。
- 追加サービスを提供する。顧客体験を向上させるために追加サービスやカスタマイズオプションを提供します。
価格を上げるということはそれだけコストに余裕ができるということですから、そのコストを「できるだけお客さんが満足するような対策に使う」ということです。
顧客サービスの向上
商品やサービスの質を高めるだけではなく、その「届けかた」「提供のしかた」の質を上げていくことでお客さんのトータルな満足度を上げる工夫ができます。
- スピードアップする。お客さんからの要望や困りごとに素早く対応できると、お客さんの満足度はアップします。
- 問題解決する。お客さん自身が「何に困っているかわからない」という状態になることは多いものです。話を聞き、お客さんの問題の解決を手伝ってあげることでお客さんの満足度はアップします。
ブランド戦略の構築
価格はとても感覚的なもので、お客さんは自分が買うものの価値を正確に測定できているわけではありません。
そのためお客さんは「ブランド」を手掛かりにします。
ブランド力がアップすれば、高くてもお客さんに選んでもらえる可能性が高くなります。
- イメージの一貫性を大事にする。メッセージやビジョンを一貫して伝え、ビジュアル的な要素に配慮する。
- 認知度を高める。「知られていること」によってブランド力は高まります。
マーケティングと広告
商品と価格のバランスだけではなく、どんなお客さんに買ってもらうのか、どのようなアピールをするのか、どこでどのように売るのかといったトータルな「売り方」を考慮します。
- ターゲット市場とのマッチング。お客さんのニーズに合わせた伝え方や伝える方法を考える。
- コミュニケーション戦略。インパクトのある広告やコンテンツを通じてお客さんに見つけてもらいやすくなる工夫をします。
とくに広告予算の少ない中小企業では「コンテンツマーケティング」が販売の上でもブランド構築の上でも有効に働くケースが多いです。
コンテンツマーケティングについてはこちらで詳しく解説しています。
適切な価格設定方法と価格戦略の選び方
あなたの会社はどのような価格設定と価格戦略を選択すればいいのか?について重要な要因を説明します。
ターゲット市場の理解
まずは、あなたのお客さんを理解することです。
- お客さんのニーズや要望を理解し、それに基づいて価格戦略を検討します。
- 価格に対する感応度を調べる。お客さんはどれくらい価格の変化に敏感なのか?価格の変化によってどれくらい販売量に変化が出るのか?という「顧客の価格感応度」を調査して、適切な価格範囲を設定します。
低価格設定から高価格設定に切り替える場合には、「ターゲットを替える」という決断が必要になる場合もあります。
コスト分析
とくに中小企業や個人事業の場合「この商品やサービスにはいったいいくらのコストがかかっているのか」というコスト計算があいまいなケースが多いです。
どんな価格設定であっても、コスト割れを起こしたら利益を出すことはできません。
利益が出せる価格設定をするためには、コスト計算は欠かせません。
- 家賃などの事業にかかるコスト(固定費)と、商品ごとサービス提供ごとにかかるコスト(変動費)それぞれの構造を明確に把握し、最低価格設定を計算します。
- 事業全体の利益目標を考えたうえで、最低限の価格設定を把握しておきましょう。
競争状況の分析
競争が激しい業界の場合や、まだ差別化が不十分な場合は、競合の価格設定を無視することができません。
今後、独自の価格戦略を採っていく上でも、競合の分析をしておきましょう。
- 競合の特徴やアピールポイントを把握しておく。お客さんのニーズと競合のアピールポイントにズレがないか見極める。
- 自社の差別化ポイントと同じアピールをしている競合がいないか(差別化ポイントが被っていないか)調査する。
ブランディング
今のあなたの会社や商品は、お客さんからどのように見られているか?
客観的に把握して、お客さんが持つイメージを意識的に調整していきます。
- ブランドのポジションを調整する。いまのあなたが、お客さんから見たときにあなたにとって「望ましく姿」だとしたら、その姿を「望ましい姿」に調整していきます。
- プレミアム価格を検討する。上級版、上位バージョンの商品やサービスを開発する。
- ネット上で「他者から見たときの姿」を意識的に統一していく。
価格戦略のテストと検証
「いくらの価格設定ならどれだけ売れるのか」は、現実には売って見ないとわからないことが多いです。
そこで、実際にいろんな価格設定で売ってみて「売れ行き」や利益を確認した上で価格を調整していくことができます。
- 異なる地域やタイミングで異なる値段でテスト販売してみて、最適な価格を探ります。
- お客さんから直接声を聞き、「ちょうどいい価格」を探ります。
価格設定や価格戦略の選択はビジネスの成功に大きな影響を与えます。ターゲット市場、コスト、競争状況、ブランドポジショニング、戦略的価格設定など、複数の要因を総合的に考慮し、戦略的な価格設定を行い、ビジネスの成長を促進しましょう。
まとめ: 価格設定の知識を武器に成長する
価格設定の手段や手順についての知識を身につけて、最適な価格設定をするだけでも利益は改善することが多いです。
価格設定がうまくいくと、あなたの会社もお客さんもハッピーになれます。
以下に重要なポイントをまとめます。
価格設定戦略でもっとも大切なポイント
価格設定でもっとも大切なポイントは顧客理解です。
自分のお客さんのことを理解せずに、最適な価格設定はできません。
多くの経営者は、お客さんのことを「わかったつもり」になっています。
あらためてお客さんの行動を観察して、耳を傾けてみましょう。
ばあいによっては「お客さんを替える」決断も必要です。
価格設定方法のメリットとデメリットを知る
多くの価格設定方法が存在しますが、「どんな場合でもコレがベスト」という選択はありません。
それぞれの価格設定戦略のメリットとデメリット、向いているケースとそうでないケースを把握することができれば、自然に「自分の商品に向いた価格設定方法」が見つかります。
事例研究と考察
中小企業の場合、低価格戦略が適しているケースはごくわずかです。
あなたと同じくらいの事業規模の企業の中から、価格設定で成功をした事例を集めて研究してみましょう。
価格競争回避の戦略
お客さんにとっての価値ある差別化や、高い付加サービスによって高価格でも売れる方法を粘り強く探っていきましょう。
適切な価格設定と価格戦略の選択
頭の中や会議室だけで「最適な価格」を考えていても答えはみつかりません。
最終的には「実際に売ってみる」ことによって最適な価格を探ることも大事です。
価格設定の知識を身につけ、これらの要点を活用することで、あなたの事業がもっと儲かることを期待しています。
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